ここではドレーピングの基本的な流れをご覧いただきます。 今回は男性用シャツを組みますが、何を作るにも、行程はすべて同じだと考えてください。 特徴はすでに多くのページで述べているとおり、衿グリやアームホールを自分勝手に決めないという点です。衿グリは衿が、アームホールは袖が決めるのだというところを、具体的に見ていただきたいと思います。ただしシルエットを作り出すために、胸グセや肩甲骨のクセをどう処理するのかなど、ディティールの詳細についてはスキップしてください。ここではあくまでも基本的な流れをつかんでいただくことが先決です。ディティールの詳細は、順次個別に説明したいと思います。そしてもうひとつ。ドレーピングこそがパターンメーキングなんだというあたりを見ていただきたいのです。僕がドレーピングにこだわってパターン作りをやっている理由を、ご理解いただければありがたいのですが・・・。 |
1. シーチングに地の目を入れる シーチングは原則として平織りを使いますが、よっぽどしわくちゃになってない限り、僕はみなさんのように丁寧にアイロンをかけたりしません。 面倒で時間がかかるからです。また時には地の目線すら入れないこともあります。メンズではレディースのように、バイヤスやハーフバイヤスでの生地使いがほとんどないため、単純に手を抜いているだけですが、レディースパタンナーのみなさんはできるだけ手を抜かず、丁寧な作業を心がけてください。 |
2. 身頃を作る
身頃作りの最大のポイントは脇面の作り方にあると思っています。
後から見た時の表情も前から見た時の表情も、脇面と袖の付き方ですべてが決まると言っても過言ではありません。だからこそダミーの基礎をしっかり作らなければならないのですが、脇面を理想的に作るためには様々なテクニックが必要です。それは簡単に解説できる内容ではないのでここでは避けますが、その他の重要なポイントを以下に記します。
「身頃は面で構成されている」
身頃の各部位は単一面で構成されているとする考え方ですが、面とは、立体的な3次元ではなく、平面的な2次元だという意味です。
といっても、決して直線的にできているという意味ではありません。面自体が曲線を描いていても構いませんが、それはあくまでひとつの軸に沿った曲線に限ります。
解りやすく具体的に言いましょう。コピー用紙を一枚用意してください。これを長手方向に湾曲させます。これが1軸に沿った曲線という意味です。試しにこの方向と直角に交わる方向にも曲げてみてください。くしゃっと潰れてしまい奇麗な面は作れないはずです。
つまり生地を紙と考えればいいわけです。
紙なら上記のような無理はききませんから、自然に、紙が行きたい方向に従うしかありません。これがドレーピングのひとつのコツです。
3. 衿と衿グリを作る
何度も何度も繰り返し言いますが、衿と衿グリは二つでひとつ。別々には存在しないものです。衿が奇麗に納まったところが衿グリですから、衿の付け線と衿グリは同じものだと考えなければなりません。これは次にある袖と袖ぐりの関係とまったく同じです。詳細は以下のページを参照してください。
衿の基本
アームホールと袖の基本1
アームホールと袖の基本2
アームホールと袖の基本3
ここではオープンカラーをやりますので、衿の作り方は基本とはちょっと異なりますが、考え方や作法の基本はテーラードの衿とまったく同じです。以下のリンクも参照してください。
テーラード衿の作り方
これは応用範囲の広い方法です。オープンがきっちりできるようになれば、ステンカラーやショールカラーも簡単にできるようになると思います。
4. 袖を付ける
理想的な袖を先に作り、それを身頃に取り付け、付いたところがアームホールになるという考え方ですが、衿と比較すれば格段に簡単です。もっとも、簡単にできるようにあらかじめダミーの基礎をきっちり作り込んでいるからですが、脇を完全な平面として捉えるという意味をご理解いただければと思います。
ちなみに、ラグラン袖も二枚袖も、袖は何でもここからスタートします。もちろんイセの入ったテーラードも同様です。詳細は別のページで解説しますが、この方法がすべての基本になると思ってください。
5. パターンの完成
さて基本的なドレーピングの流れをご覧いただきました。ドレーピングという方法によって前身頃と後身頃が出来上がるわけですが、このシーチングこそがパターンなんだということをご理解ください。つまりドレーピングとは、パターンメーキングのことなのです。このムービーをご覧いただけば、なぜ僕が平面製図をやらないかが解ると思います。決して平面製図を否定するわけではありませんが、どうして平面製図でパターンが作れるのか、僕にはどうしても理解できないのですよ。