テーラードジャケットパターン全行程2
僕は今回ルパン三世をイメージしましたが、もう少し具体的にいうと以下のようになります。 1.活動的であること——動きやすい 2.細身であること——–本来よりワンサイズ下を着ている感じ 3.ポップな雰囲気——–未完成なワザとテクニック と、こんな感じです。 ポイントは、完成された老練な技術を、わざと使わないということでしょうか。それによって、素人っぽい、未熟なカッコ良さを表現したいと考えているわけです。シワひとつ無い美しいシルエット、というのではなく、シワもありツレもあり、でも何となくカッコイイ。そう感じられれば大成功です。今回はドレーピングによって作られた原型をイラレで写し取る作業です。この平面作業によって完成させたパターンでトワルを組むわけですが、ポイントはいい加減に作るということです。いい加減とは、適当に、ということです。この最初に組むトワルは、パターンの完成度を見るためではなく、より完成度を高めるためのものだと理解してください。つまり通過点に過ぎないということです。だからあまり真剣に考えず、どうせ後から直すのだから、という気持ちで取り組むべきです。重要なことは、トワルを何度も組むという覚悟です。完成度を高めるためなら、何度でも何度でも組むという覚悟を持たねばなりません。 |
1. 後身頃のトレース トワルをスキャンし、そのデータをイラレに貼り付け、それをペンツールでトレースするのですが、ムービーではスキャンしたデータが見えにくいかも知れません。どのパーツからはじめても構いませんが、基準となる線(普通は中心線となります)が垂直(または水平)になるよう、画像そのものを回転させるところからスタートします。 あらかじめ引いてある基準線に合わせ、回転ツールでトレースした基準線と画像を同時に回転させるのがミソです。 |
2. 前身頃のトレース
作業で意識すべきは常にスピードです。もちろん完成度も大事ですが、僕のパターンメーキングでは、それは徐々に上がっていくシステムになっているわけですから、あとは手を抜かずにやるべきことを順番にやるだけです。したがって仕事の速さが重要なカギになります。とにかく早くやる。そのためにはどうすればいいか。常にそこを考えます。
3. 平面操作1 身頃を引く
普段イラレでは細い線で作業をしているため、線が見辛くなって申し訳ありません。次からは太い線でやるようにします。
まずは身頃です。
ここはじっくり見ていただくのが一番いいと思いますが、例えば衿グリやアームホールのように、全体でひとつのカーブを作っている線分は、パーツ毎に分けて引くのではなく、全てのパーツをつなげた状態で見るという点が重要です。特にCADでパターンメーキングをやっている方の中にそういう人を見かけますが、原則として、絶対にあってはならないことです。
4. 平面操作2 アームホールのつじつまを合わせる
ドレーピングで紙の袖を取り付け、取り付いたところがアームホールとなるわけですが、けっこういい加減な作業で取り付けているため、平面で見た時、袖とアームホールのつじつまが合わないことがあります。比較的山の高いジャケットのような袖は、袖底のカーブとアームホールの底とが、わりと長い距離で合っている必要があります。それがドレーピングでうまく再現できなかった場合は、もちろん平面で修正を加えます。バカ正直にドレーピングで得た情報だけを信じてはいけません。
5. 平面操作3 身頃、衿を完成させる
4でできあがったアームホールを身頃に戻します。
前ダーツのマニュプレなどを行い、上衿を作ります。
衿はご覧のように棒衿です。この後に組む両身のトワルで甘さを調整することになるため、ここではこれで十分です。
えっ、衿はドレーピングで作ったんじゃないの?
そう思った方は勘違いをしています。ドレーピングで作ったのは上衿ではなく、返り線(クリースライン)です。返り線の位置と、天幅を決めただけだという点を再度確認してください。
6. 平面操作4 袖にイセ分を加える
詳しい袖作りの方法はTJメカニズム 3…..袖1またはTJメカニズム 4…..袖2参照してください。
違うのはイセの量です。ここではゴアテックスのようにイセの入らない素材を使いたいので、イセ量は最小限です。といっても、少しでもイセるわけですから、普通のテーラードのように綺麗に仕上がるとは思えませんが・・・。
イセ分を加えると山も高くなる、というあたりがみなさんには解りにくいかも知れません。それが僕の作り方なので仕方ないのですが、ドレーピング時の紙袖はその分を想定しているわけですから、ちょっと難しいと思うでしょう。でもそんなことはありません。簡単です。2、3回やればわかってくるものです。
7. 平面操作5 袖作り
このパートもTJメカニズム 4…..袖2を参照していただいたほうがいいかも知れません。
素材を考えた場合、山袖と谷袖の切替線は、本来なら2分の1にしたいところです。つまり山袖と谷袖の幅を同じにするということですが、やはり袖の正面に切替がくるのはちょっと気になるため、少しだけ裏に移動しました。ただしこれも何センチというのではなく、ブレンドを使って決めている点に注目して下さい。
8. 出力
すべてのパターンが完成したらいよいよトワル作りです。ここでも重要なのはスピードです。以下に早くトワルを組むか。そのためにどうするべきか。それを考えなければなりません。
さてシーチングの準備からドレーピングがはじまり、スキャン、トレース、平面操作という流れでここまできましたが、実際にかかった時間は約2.5時間です。もちろん僕がやったときの時間なので、みなさんはもう少しかかってしまうかと思いますが、どうすれば作業が早く進むか。常にこれを考えることが最も重要だと思います。常にこれを考えていれば、必然的に作業時間はアップするはずです。