デザイナーがイメージする曖昧で不完全な絵型を現実の洋服として作り上げる作業。この作業を僕はパターンメーキングと呼んでいます。平面でしかない単なる絵を立体物として作り上げる。実際に人間が着られる服に作り上げる。それがパターンメーキングです。ならば、パターンとは立体そのものであり、ドレーピングという立体的手段をパターンメーキングの方法論とすることは極めて合理的なことです。

もちろん一流のパタンナーがやれば、平面と言えども合理的方法と成り得ます。熟練したパタンナーが平面で作る洋服は、ドレーピングで作るのと変わらない、時にはそれ以上の完成度を見せるものです。なぜ彼らは立体の洋服を平面で考えられるのでしょうか。その答えは実に明確です。熟練パタンナーは彼の頭の中で、常にドレーピングをシミュレートしているからです。頭の中でドレーピングを行っているわけです。したがって逆説的に言うならば、未熟なパタンナーが平面で作る服の完成度は低いということになります。それはなぜか。頭の中でドレーピングのシミュレートができないからです。

ドレーピングという作業をとおして、パタンナーは洋服のメカニズムを学びます。「玉置の考え/なぜトワルが必要か」にも書いたとおり、物事はその仕組みやメカニズムを把握しなければ本質を理解できません。ゴルフのスイングと同じだと僕は言いましたが、メカニズムを知らずに振り回してみたところで、何年経っても正しいスイングは身につかないのです。パターンメーキングの技術やノウハウも同じです。まずはこのメカニズムを把握することから始まります。
把握したからといって優れた技術がすぐさま身につくわけではありませんが、後は繰り返しの反復練習あるのみです。ゴルフのトッププロだってオリンピック選手だって、つねに疑問を抱きながら反復練習に追われています。自分では掴んだと思っていたメカニズムや仕組みが本当に正しいのか。もし正しければ、結果が付いてこないのはなぜか。日々こうした悩みと葛藤の中で技術は磨かれていくのです。そしてその日々を徒労に終わらせないためには、確実にメカニズムを把握できる方法論でその道に取り組む必要があるのではないでしょうか。

パターンメーキングのメカニズムや仕組みをドレーピングなしに把握することは不可能です。これは僕の独断的偏見かも知れませんが、三十数年のパタンナー生活の中で、多くのパタンナーを見てきて導かれた結論です。もちろんみなさんにそれを強要するつもりはありませんが、パターンの技術を本気で身につけたいとお考えであれば、学校に通ったりCADを考える前に、まずはボディーを買うことをお奨めします。ドレーピングにボディーは欠かせない道具ですから。

さてドレーピングについては玉置の考えでも補足説明をしています。
ドレーピングの必要性もご覧ください。