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理想のダミーを求めて 3
2012/01/10


ドレーピングダミーの分野に於いて、キイヤさんは日本で最も歴史のあるダミーメーカーです。僕は今回のコラボで、ダミー作製の、本来なら滅多に見ることのできない現場を、つぶさに観察する機会に恵まれました。

英国KL社の指導の下、僕はキイヤさんの技術陣の献身的な協力をいただきながら、理想のダミーを実現するための共同作業に参画させていただきました。これが老舗の老舗たる所以なのか、キイヤさんの技術陣に継承されている技術の重さを肌で感じました。原型作製から仕上げに至る数多くの工程のすべてに、職人達のワザが生かされていました。そしてその工程のほぼ100パーセントが、幾重にも積み重なったローテクの、機械らしい機械など使わない手作業であるという点にも驚きました。人間の腕と目と脳ミソが、世界で最も優れた精度を誇るダミーを作り上げています。人間の力だけで作り上げる究極の造形美がそこにありました。ITに侵された僕にとっては衝撃的でもあり新鮮でもありましたが、服作りが、最後に残された人間のワザによって支えられている産業であることを改めて認識しました。

キイヤさんの製作現場は、どこを見ても興味津々かつ心踊る光景です。「玉置の仕事場」をご覧いただいているみなさんにとっても、珍しい貴重な映像になることは間違いありません。キイヤさんからの特別許可もいただいておりますので、神秘とも言えるダミー製作の一部始終を、できるだけ多くの映像でご紹介したいと思っています。
 

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原型師の削り出した形を、僕がドレーピングで検証するわけですが、このダミーで作る服がカッコイイかどうかは、削り上がったダミーの形を見ているだけではわかりません。実際にドレーピングをやり、生地の落ち方やシワの出方の適正を判断しなければなりません。

ドレーピングの度に修正を依頼し、原型師は削ったり盛ったりを繰り返します。そしてまたドレーピングによる検証と、同じ作業を何回も繰り返すことになります。修正とダメ出しとドレーピングを何度も繰り返しながら、ダミーは少しずつ精度を高め、生き物のように魂が吹き込まれていくのです。
 



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均一な品質を保ち、なおかつ経済効率を高めるため、他の多くの工業製品と同じように、ダミーの製品化には精密な「型」が必要になります。これを「雌型」と呼ぶのだそうですが、やはりこれも他の工業製品と同じように多額の制作費がかかります。したがってひとつの雌型が完成したら、そのコストを消却するまでは使い続けなければならず、カタチが気に入らないからといって、あるいは欠陥を改良するためといって、そうしょっちゅう作り替えるわけにはいきません。
そこで重要になるのが、雌型を作るための元となる「原型」の存在です。原型の完成度が雌型の精度を左右すると共に、商業ベースに乗るかどうかというコスト構造をも支配することになります。原型師の持つ技術や感覚が、雌型の完成度、製品の完成度にダイレクトに影響するわけですから、その職務の重要性には恐怖さえ感じます。
 

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今回のダミーは、全くのゼロからスタートしたわけではありません。KL社の代表的メンズダミーGKというモデルがベースになっています。このモデルは日本でも多くのブランドが使用する人気ダミーですが、イギリスの伝統と、KL社の技術とセンスが凝縮されたダミーだと言えるでしょう。しかし僕には不満でした。というか、時代の流れと共に不満になってしまったのです。  



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イギリスの伝統、KL社の技術とセンスが凝縮されたダミーGKをベースに、僕の理想を具現化する日本の業師がいます。「原型師」と呼ばれる技術者ですが、このダミーが成功するか否か、それはすべて彼の腕とセンスにかかっています。 しかし最終的ジャッジを下すのは僕ですから、どうしたってドレーピングをする手が震えます。左は途中段階で何度も行われたドレーピングの一部です。こうして少しずつ完成へ向かいます。  



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2011年12月27日。
遂に原型の完成です。
イギリスと日本、それぞれを代表する老舗ダミーメーカーによる夢のコラボレーション。その、第一弾が完成したのです。
古き良き英国のトラディショナルと、キイヤの若き原型師に、拍手!
 



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Copyright Koichi Tamaki