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マニュプレーション 1



手作業時代を振り返ったとき、マニュプレーションはかなり厄介な作業だったと記憶しています。
たたむにしても開くにしても、セロテープで貼り合わせたパーツに新たな線を引き直し、貼ったテープをカッターで切り離し、展開したパーツを新たな紙に清書するという流れでした。紙のパターンを切ったり貼ったりですから、何といっても正確性に欠けます。しかも細かな指先の作業となるわけですから、外科医の手術と同じで、個人の器用さによって結果が大きく異なります。不器用な人のやった跡は悲惨です。それを取り扱う工場さんも大変だと思いますが、不器用な本人はそれなりに精一杯やった作業なので、これをむげに責めるわけにも行かず、諦めるより他に方法がありませんでした。

Adobe Illustratorを使うことのメリットは数多くありますが、マニュプレーションは中でも特筆すべき恩恵を受けているのではないでしょうか。器用か不器用かといった個人の能力差はほとんど無関係になりましたし、正確性は甚だしく向上しました。こうした部分を見ていると、さすがにコンピュータは凄いなと感じます。しかしいつでもそうですが、道具としての能力がいくら高くても、使う人の能力が低ければ、それは意味を成しません。手作業を長く経験したパタンナーなら、誰でもマニュプレーションのノウハウは持っているし、手作業でやった方法をそのままコンピュータで実践すればいいだけのことですから、コンピュータの操作方法は別として、たいして難しい問題ではありません。難しい、というか困ってしまうことは、マニュプレーションそのものが解っていないというケースです。これはマニュプレーションに限らず、コンピュータ時代に若手を育てる際の大きな課題だと思いますが、やはり、だからこそ、立体をやるしか他に方法は無いと僕は思うのですが・・・。

物事というのは、その仕組みとメカニズム、理屈が解らなければ解ったことにはなりません。
僕はコンピュータを20年も使い続け、多くの知識を持っています。大抵のことは解決できます(Macに限りますが)。だからみなさんは僕がコンピュータに詳しいし、良く解っていると思っているようですが、実はまったく逆です。0と1(あるいはプラスとマイナス)でどうしてこのような作業ができるのか、その根本的なメカニズムを理解していません。コンピュータどころか、テレビがどうして映るのか、エアコンがどうして冷えるのか、その仕組みさえも解りません。だから僕は自分でコンピュータを作れないし、テレビもエアコンも作れません。でも、洋服は作れます。なぜか。仕組みが解っているからです。

 

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1. 上衿の展開

下はジャケットの上衿(地衿)です。立体で取り付けた仮の衿です。図にあるとおり衿腰の高さが2.5cm、返り分が3.5cmに設定されています。クリースラインより0.7cm下がった位置で切替へ、返り分をマニュプレーションで展開します。

 

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この操作のポイントを解説します。
まず重要なのは、切開する分量を正円で表現するという点です。この場合、長方形(正方形)ではなく円を使うのが正解ですが、その理由は見れば解ると思います。正円ならどこで計っても半径の長さは同じなので、その特徴を利用した方法です。

もうひとつのポイントは回転ツールです。
マニュプレーションによるパーツの切開は、ほとんどの場合に回転ツールを使います。
こうして図解すれば誰でも解るとおり、手作業での方法を、コンピュータという「紙と鉛筆」で再現しているだけのことです。したがって手作業による方法が解らない人には、コンピュータを使っても解らないということになります。

 

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2. 膝ダーツの展開

下図は膝ダーツを取った、例えばクライミングパンツのようなものですが、その前身を模式的に描いたものです。流れは以下のようになります。

1.ダーツをたたむ
2.脇線(または内股線)を引き直す
3.ダーツ頂点で脇線(または内股線)を分割する
4.分割した線を展開する
5.距離を合わせる

下のムービーを見れば解ると思いますが、ダーツをたたむのも展開するのも、回転ツールを使うところがミソです。そして重要なのがその操作方法です。回転パレットを使っての数値変化ではなく、マウスによる手作業というのが特徴です。ムービーではこの部分を良くご覧いただきたいのですが、まさにCADには無い、イラレ独特の操作方法だと思います。しかしそれも前述したとおり、要は手作業の再現です。手作業でやってきた方法を、いられでやるとこうなる、というムービーです。

1のダーツのたたみは、回転ツールの中心をダーツ止まりに置き、パス1からパス3まで、黒矢尻に変化した回転ツールのポインターをドラッグします。
2で引き直した線分を3で分割する時は、パス3との交点でハサミツールを使います。上の回転もそうですが、どちらもスマートガイドの表示を眼で確認しながら正確に行わなくてはいけません。ここは手作業なので個人差が出るところですが、器用か不器用かではなく、雑かきっちりしているか、という正確が結果を左右します。

4の展開もまた回転ツールです。1の作業のまるっきり逆を行えばいいわけです。

最後の距離あわせですが、原則的には膝の中心で、上下に(2分の1ずつ)切り開くのがいいと思います。しかしこれは特にルールがあるわけではないので、ムービーのように上下2箇所に切開線を設け、中心と合わせて4箇所で開いても構いません。

 

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マニュプレーションは他にもたくさんありますが、今回はここまでにしましょう。
ところでムービーを960X540という大型にしました。さすがに見やすくて解りやすいと思いますが、ダウンロードにかかる時間はみなさんどうですか?もし重すぎるようならメールでご指摘ください。これまでどおり小さいサイズに変更します。

 

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Copyright Koichi Tamaki