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理想のダミーを求めて 1
2011/12/15


ドレーピングをやるパタンナーにとって、最も重要な道具はダミーであると僕は言いましたが、同時に僕は、ダミーを信用してはいけないとも言いました。詳しくは「ダミーとモデルをご覧いただきたいのですが、僕は30年以上も使っている KENNETT & LINDSELL 社のダミーを、せいぜい70点だと評価しています。自分の気に入ったダミーがこの世に存在しないために、いわば仕方なく、だましだまし、ごまかしながら使っているのだと言いました。

しかし最近は、もう限界だと感じています。このままでは、つまり今のダミーを使う限り、洋服の完成度をこれ以上上げることができないと感じています。たとえ刹那の儚い存在であれ、今はこれだと思う、理想のダミーが必要です。どうしてもそれが欲しいのです。かつて僕は、もしも僕が彫刻家なら自分の気に入る理想的なダミーを作るだろうと言いましたが、ついにその時が来たのだと思いました。

実は僕は、大胆にもダミー造りに挑戦したのです。しかし所詮は素人です。彫刻家のようにうまくいくわけもありません。粘土を盛ってヤスリで削って、部屋中石膏で真っ白にしながら頑張りましたがダメでした。やはり餅屋は餅屋。専門家に任せるより他にしょうがないという結論に達し、1年ほど前から、ある計画を進めました。

イギリスの KENNETT & LINDSELL 社はヨーロッパで最も大きなシェアを持つ、歴史あるダミー会社です。日本でも多くのブランドがこのダミーを使っています。当然のことながら、ダミー作りに於いては世界一のノウハウとスキルを持っています。僕は彼らに、僕の理想を実現してもらおうと考えました。
しかし僕が求めるのは理想のカタチです。カタチは数値ではありません。数値なら相手が誰であれ話は端的に伝わりますが、どんなに言葉や絵を駆使しても、理想のカタチを説明するのは困難を極めます。彼らに僕の思いを理解させるのは不可能だと思いました。

せめて相手が同じファッションの世界に生きる、そして日本人なら、僕の欲しいカタチをより正確に理解してくれるでしょう。僕はそう考え、日本の老舗「キイヤ」の門を叩きました。イギリスが持つ伝統的なセンスとノウハウをベースに、正確さと緻密さで世界をリードする日本人の技術を合体できないか。もしこれが実現したら、ファッション界を変えるほどの名作ができるかも知れない。そう考えたのです。たとえ倉庫の片隅で寂しそうに積まれる刹那の儚い夢だったとしても、今、これが理想だと思えるダミーを、どうしても僕は作らなければならないと思いました。
 


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ここはキイヤさんのアトリエです。
日本の技術がハンパじゃないことを再確認しました。小刀一本で理想のカタチを作り上げてしまうのですから、さすがは老舗! まさにプロの彫刻家だっ! キイヤのダミー技術者(原型師と呼ぶそうです)は凄腕です。

イギリスの伝統と日本のワザ。凄いコラボレーションが実現しつつあります。みなさん、乞うご期待!
 

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Copyright Koichi Tamaki