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パンツのメカニズム 9 折山線の設定



パンツのメカニズム 5で、折山線(地の目)を設定する方法をムービーで紹介しています。これはドレーピングから得られた情報を基準に作業するというひとつの考え方です。内股線と脇線の成す角度の1/2を折山線として設定します。

僕は長い間この方法で折山線を設定していました。他にもいろいろ試して見ましたが、これが最も無難な方法であろうと判断したためです。その根拠は明確です。自分の勝手な意志や思い込みから設定したものではなく、ドレーピングが示してくれた情報に、素直に従っただけだからです。パターンメーキングは物理であり数学であり、常に根拠と必然性が結果をもたらすという考え方は、現在もなお変わっていません。確かに変わってはいないのですが、しかし本当にそうなのかという猜疑心も、頑固な考え方と同時に、常に抱いています。

2014年2月から、パンツのメカニズムに関するワークショップを開催していますが、そこでも僕は折山線をどう設定するかという講義をしました。その中で僕は、折山線を決定する方法は他にもあるという話をしました。いろいろな考え方がありどれにもそれなりの根拠があるため、なにが最善手かはみなさん自身で決めて欲しいと、かなり無責任な解説をしました。同時に、最近僕がどう考えているのか、どんな方法で作業しているのかという話もしたのですが、その中でヒップ線を基準にしたらどうだろうかという、ひとつの提案をしました。
 

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1. いろいろな考え方

ここで考えるパンツとは、開脚や前傾ではない、ごく普通の、スーツの組下のようなレギュラーパンツです。前身頃の折山線を中心に、ワタリ位置でも膝位置でも、内側と脇側の分量が等しくなっている、よく見る平面製図にあるような一般的なパターンを指します。つまり折山線でプレス(クセを取るかどうかは別にして)できるパンツです。それを前提に話を進めて行きますが、もうひとつ、ここで言う折山線とは、地の目線でもあるということが前提になっています。ジーンズを見れば明らかなように、本来、地の目線はデザインですから、どこにどう設定しようと勝手なはずです。しかしここでは、地の目線と折山線は等しいものと考えてください。

下はパンツダミーの写真ですが、ご覧のとおり、ダミーにはヒップ線や中心線など、いろいろな目安が張り付けられています。バスト線と同じように、ヒップラインは床と平行、つまり水平に引かれているのが普通です。ならば折山線は、ヒップラインと直角に交わるべきではないのか、という考え方です。

一般的な平面製図はどれを見てもそうなっているし、パンツを履いたモデルが真っ直ぐに立った状態を想定したら、この考え方にはそれなりの根拠があるように思えませんか。実際に両身でトワルを組んでみると、なかなかいい感じで履けます。一見すると、まるで問題無いように思えるのです。考え方は他にもあります。理想と思える折山線を、あらかじめダミーに張り付け、ドレーピングの最後にこれをマークして抜き取る方法です。

ドレーピングは頭で考えるのではなく、見た目でシルエットを作り上げていく方法ですから、理想的な地の目を始めに想定するという考え方は、それなりに理に適った方法のように思えませんか。実際にトワルを組んでみると、これもそれなりにカッコ良く履けるのです。ヒップ線の直角で折山を求めた考えと同じで、まるで問題無いように思えます。
 

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次の画像は実験用に組んだトワルです。
上段はワークショップでも使った、一般的な平面製図から作ったトワル、下段はヒップ横線と直角に交差する垂直線を折山と設定したトワルです。履かせた感じを見ると、まったく問題ないことがわかります。というより、どちらもかなり綺麗に収まっているのではないでしょうか。
 

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2. 捻れ

一見すると何も問題のないトワルを、半身の状態でたたんでみたのが下の画像です。

A、Bは上記の一般的なレギュラーパンツ。C、Dはヒップ線基準の折山線で組んだトワルです。上記のとおり、ダミーに履かせれば何の問題もないのに、折山線に合わせてたたんでみると、どちらも捻れて、ぴったり真っ平らにたたむことができないのが解ります。無理に平らにたたもうとすると、左側写真のように、内股で大きな余りが飛び出してしまいます。

なるほど、クセ取りをするのが前提なら、確かにこの捻れは必要なのかも知れません。クセ取りの「クセ」がこの捻れに相当するとも考えられます。僕のパターンのように、ぴったり真っ平らにたためるパターンでは、そもそもそのクセがないのですから、したくったってクセ取りなどできませんよね。
 

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3. ドレーピングからの情報

パンツのメカニズム 5で示している折山線の設定方法をもう一度確認してください。脇線と内股線が成す角度を二等分した線分が折山線になるという考え方は、左の写真を見れば解るとおり、僕の理論でそう言ってるのではなく、ドレーピングが示す単なる情報をもとに、必然的に導かれた結果に過ぎません。左のトワルは脇線と内股線が重なるようにたたまれていますが、これはちょうどレギュラーパンツにプレスをするときのたたみ方、いわゆるスラックスだたみです。この状態では脇も内股もすべて直線ですから、いつも言うとおり、どこをどうたたんでも、このように綺麗にペタッとたたまれます。このトワルを見る限り、折山線とは自分が決めるものではなく、必然的に決まってくるものだと言えるわけです。ダミーに履かせた状態で問題無いのは言うまでもありません。当たり前の話ですが、問題無いシルエットでドレーピングしたトワルなんですから、履かせて問題など出るはずはありません。だからこそ話がややこしくなるのです。
 

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ここまでの話をまとめてみましょう。

ドレーピングで得られた情報を素直に信じて従う限り、脇線と内股線が成す角度の1/2が折山線になる。
膝から下のパンツは、折山線の直下に繋がる。
ドレーピングで作られたパンツは捻れないで綺麗にたたむことができる。
ドレーピングで作られたパンツはクセそのものが存在しないから、原則としてクセ取りができない。
一般的なパンツや意識的に折山線を設定したパンツは、スラックスだたみにしようとすると捻れる。
一般的なパンツや意識的に折山線を設定したパンツは、クセ取りをしない限り綺麗にたたむことができない。
どちらのパンツも、履かせた姿に問題は無い。

果たして折山線をどう設定するべきか、いずれこの答えは出るかも知れません。しかし今のところ、これに対して論理的かつ明確な説明をすることができません。みなさんのお考えを聞かせていただきたいと思います。

さてそれはそうと僕が長年やってきた折山線の設定方法ですが、これを解り易くWEBレクチャーで説明できていないので、パンツのメカニズム 5とは異なる、もっと解り易く簡単な方法で説明したいと思います。とは言え、理屈はどちらも同じです。パンツのメカニズム 5で紹介している方法と、以下に紹介する方法とで、出てくる結果に大差はありません。どちらでもみなさんにとって解り易い方法を選んでいただければと思います。

 

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4. 折山線の設定方法

パンツのメカニズム 5では、特にドレーピング時に折山線を設定せず、脇と内股の二等分でそれを求めましたが、今回ご紹介する方法は、ドレーピングの最後にマークしたトワル上の折山線を優先し、これを基準に作業を進めるというのが特徴です。また手作業による誤差を微修正するというのも、この方法の特徴でもあります。これによって、より正確かつ数学的に平面作図を行うことができます。

この方法は先に記したとおり、2014年2月、3月に行われたワークショップでの僕の提案をきっかけに再考されたものです。ワークショップが終了した後、そのワークショップに参加していたパタンナーさんから、もっと解り易い方法を示して欲しいというご意見をいただきました。もしこのご意見をいただかなかったら、この新たな方法にたどり着けていたかどうか定かではありません。そのご意見をいただいたパタンナーさんに対する感謝の気持ちを込めて、ここに書き添えさせていただきます。良く解らないことやうまく説明できないことは、ややもすると棚上げにして先送りにしたくなるのが人情ですが、こうした素朴で素直なプレッシャーが、技術者を更に成長させてくれるのものです。なんともありがたいことです。

 


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5. 膝から下のパンツ作図

上記の作業で作られた上部パンツは、ワタリも膝も、折山線を中心に左右均等の幅でできています。であれば先に書いたとおり、膝から下はこうなるより他に考えようがありません。これが僕の考えるパンツの基本ですが、このパンツは、スラックスだたみだろうとジーンズだたみだろうと、綺麗にぴったり平らにたためるのが特徴です。だからこそ、クセ取りができないのですが。

一方作図の特徴は比率を使うという点でしょうか。
僕はイラレで作業をしていますが、手作業から脱却して以来、コンピュータの最大の特徴を生かすために、手作業時代とはかなり違った方法を取り入れるようになりました。そのひとつが比率を使った製図です。パターンで最も重要なのはバランスだと考えている僕にとって、比率が簡単に表現できるコンピュータは、まさに理想の道具だったのです。裾幅を膝幅と同じ比率で表現するというこの方法。みなさんも是非トライしてください。センチ単位で動かすのに比べ、バランスが飛躍的に向上するはずです。

 


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Copyright Koichi Tamaki