5. 身頃作り  後身頃のポイント

僕は何でも後身頃から始めますが(前からでもかまいません)、後身のポイントは次の2点です。

1.組み直し
2.背中の振込

1番目のポイント「組み直し」ですが、ムービーにあるとおり、衿グリの切り込みを入れた後、一旦シーチングを取り外し、再度付け直します。この際サイド・ネック・ポイント辺りの座りを最優先に考え、後中心線が自然に落ちるようシーチングを操作します。あくまでも自然に、無理なく落ち着くように、組み直しを行います。

次の振込ですが、肩胛骨の膨らみ(このダミーはほとんどありませんが)分の一部を、背中心に逃がします。どの程度振り込むかという質問はしないでください。生地の厚みやデザイン、シルエット、作りたい表情など、その時の気分も含めて、定数などは存在しません。あくまでもカッコ良くなることを想定してシーチングを操作します。



6. 身頃作り  前身頃のポイント

前身のポイントは言うまでもなく胸グセの分散です。どの程度、どこに逃がすのかが問題ですが、この場合、ダーツや切替が無いという設定ですので、逃がすべき部位は裾とアームホールと前中心の3ヶ所以外にありません。

どこにどの程度の割合で逃がすかという質問にも、恐らく上手く答えることはできないでしょう。だからこうしてムービーにしているのですが、特にアームホールに於けるボカシ方に特徴があります。縦のドレープがアームホールから下に落ち、正面から見たとき、ややAラインっぽいボックス・シルエットになるよう操作しました。これはデザインでもあるため、どれが正解といったものではありません。またここで全てが決まるとは考えず、後から組む両身のトワル、本チャン生地でのトワルと、徐々に完成度を増せばいいのです。



7. 身頃作り  脇入れのポイント

前身の胸グセ処理によってできたシルエットが、後身と脇のシルエットをリードします。つまり前身が優先されるということですが、前アームホールにできた縦ドレープを基準に考え、この分量と後アームホールのドレープ分量が、いい感じでバランスが取れるようシーチングを操作します。同時に前後丈の分量バランスも考えなければなりませんが、脇裾、ケマワシの前後分量バランスが、丈のバランスを見るときのひとつの目安になります。

ピーコートとは言え女物なので、若干ですがウエストを絞りたいと考えました。なので3パネでやろうという設定にしました。ウエストをつまんだときとそうでないときとでは、前後丈の分量バランスが変化します。これは他のアイテムでも同様に起きる現象ですが、したがって縦方向の基準はウエスト位置となり、ウエストより上は上で、下は下で距離を合わせる等、後から行われる平面操作も、立体の作法に準じてやらなければなりません。



8. 身頃作り  衿グリ周辺

単体で検証した衿を取り付けます。まずは第1釦を止めた状態、次に最も多い着方となる第1釦を外した状態を検証し、クリースラインを決めます。クリースラインが決まれば第2釦の位置が決まります。打ち合いの深さも必然的に決まり、そして衿グリが決まります。キザミや衿先の長さは、ピーコートの顔を決定する重要な部分です。目で良く確認しながら、ディティールを描き込んでいきます。



9. 身頃作り  袖とアームホール

上で修正した紙袖を取り付けます。肩幅、山角度、回転角度、振り角度などは初めに想定しているため、あとは単純に、イメージどおりピンで止めるだけです。いい感じで付いたらマジックペンでマークします。最初は肩先のポイント、次に前後身頃のアームホール、そしてカマ底を最後に描きますが、これがちょっと大変かも知れません。しかし難しく考える必要はありません。いい加減な気持ちで取り組んだ方がいいと思います。気をつけなければならないポイントは、美しいカーブを描くという点です。これはアームホールだけに限った話ではありませんが、カーブはどれも、正しい線より美しい線を心がけてください。




10. 身頃作り  完成

ムービーには写っていませんが、前後脇のダーツなど、必要箇所には忘れずにマーキングしてください。マークし忘れて取り外したら、これまでの苦労がすべて水の泡となることをキモに命じてください。必要最低限のヶ所に、必ずマークをしてください。

すべてのマークが完了したのを確認し、初めてピンを外しますが、いつものとおり、脇だけは外さないよう注意しましょう。ムービーにあるようトワルを広げ、脇にツレや変形がなく、完璧な同一平面になっていることを確認します。そしてにカマ底にマークします。前後身頃のどちらが上に重なっていても問題はありません。要は下にある身頃にマークが転写できればいいだけのことです。今回は3パネなので、正確な意味での脇はありませんが、袖付けの基準となる脇は歴然と存在するので、袖が教えてくれたカマ底のポイントマーキングは、とても重要です。最後に脇裾をマークして完成です。



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