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パンツのメカニズム 8 運動機能



パンツの運動機能を決定する主な要素(パターン設計上の)は「屈伸」と「開脚」です。
これをパターンにどう反映させるのか。今回はその方法とメカニズムについて解説します。

パンツはTOPSの各アイテムに比べ、運動機能を強く要求されます。黙って立っているときは美しいシルエットだったとしても、歩くことさえままならないようでは困ります。電車の吊革に手が伸びないのも嫌ですが、立ち居振る舞いがスムーズにできないパンツほど厄介なものはありません。履きやすく動きやすく、黙って立っているときも、カッコいいシワの出るパンツ。そんなパンツを作りたいものです。

パンツのメカニズム 5でも書いたとおり、 ドレーピングは、基本的な形状を得るのみにとどめ、それ以降の設計は平面で行います。ドレーピングをショートパンツのような短い丈で行うのもそのためですが、平面でできるところはできるだけ平面でやったほうが効率的だからです。それは運動機能を付加する場合も同じです。多少の操作はドレーピング時にも行いますが、大胆かつ大きな操作は平面でやることになります。なぜなら固いハリボテでできているダミーは、腰も脚も動かないからです。「屈伸」や「開脚」など、人が着用して動く場合のシルエットや運動性能を、不自由なダミーで再現するのは困難なためです。
 

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1. 開脚のメカニズム

下は開脚の写真です。直立姿勢から徐々に脚を広げた様子を写しています。ご覧のとおり写真のパンツはジーンズです。脇は赤耳で地の目は脇に通っています。昔からのLEVI'S同様、開脚気味に設計されたパターンであることが解ります。一番左の直立姿勢を見てください。ピンと張った脇に比べ股間にかなりの余りジワが出ています。一方右端はどうでしょう。今度は逆に股間が突っ張り脇が余っています。そして真ん中の写真を見てみましょう。脇と股間の余り方が均等に見えます。つまりこの程度の開脚に設計されているパンツだということが解るのです。

さて赤丸部分を見てください。開脚が大きくなるほど、ワタリ付近の脇線上の余りジワが多くなってくるのがわかります。これは何を意味しているのでしょうか。そうです。パターンが開脚になるということは、脇線が内股線に対して短くなるという意味なのです。逆から見れば、脇に対して内股が長いということになり、これが開脚時の運動量になります。だから直立姿勢では股間に余りが出るのです。
 

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2. 屈伸のメカニズム

次は屈伸です。注目すべきは後ろポケット下の余り具合の変化です。屈伸が強くなればなるほどこの余りがなくなり、生地が引っ張られていくのが解ります。屈伸をはじめる際、最初に使われるのがこの余りです。つまりこれが屈伸時の運動量です。
では右端以上に屈伸するとどうなるでしょう。もうポケット下の運動量は残っていません。そうです。後中心のウエストラインが下がってきますね。皆さんもよく経験する現象ですが、すでに右端の写真はウエストが下がりはじめており、これ以上曲げれば中のシャツが飛び出します。
このジーンズの屈伸度はこの程度に設計されているわけですが、昔のLEVI'Sならもっと曲げてもウエストは下がりませんでした。もちろんその分、黙って立っているときは、後ヨークの下にかなりの縦余りが出ますが。
 

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3. 開脚分量を決める

原則として開脚の分量は立体補正によって決定します。しかし何度もやっているうちに分量は感覚として解ってくるので、そうなれば平面上の操作でまったく問題はありません。問題になるとすれば、つまむ位置です。僕はワタリ線上でつまむことにしているのですが、その根拠は曖昧です。みなさんはこのムービーを見てどう感じられるか解りませんが、僕にはその位置で取ることが一番自然に思えるからです。以前は股関節の位置でつまんでたこともあるのですが、どうも脳ミソで決めているような気がしてしっくりこないのです。実際に人が着用して脚を開いてもらうと、ワタリ位置でつまむのが最も自然に見えるためです。
 


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4. 屈伸分量を決める

開脚分量と同じく、屈伸分量も立体補正で決めるのがベストです。しかしこれも、何度もやっていれば解ってくることなので、平面上で操作してまったく問題はありません。

上の開脚もこの屈伸も、このような操作を平面上で行うことをマニュプレーションと言いますが、マニュプレーションを正確に理解するためには、どうしてもこうした立体補正を経験し、そのメカニズムをしっかりと理解する必要があります。しっかり理解するという意味は、脳ミソで覚えることではなく、身体に染みこませるという意味です。身体に染みこんだ経験はいちいち脳ミソの回路を使わずに出てくるもので、早くて正確であることが特徴です。物事を理解するというのは、本質的にこのことを言うのですが・・・。

 


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5. マニュプレーション

立体補正でやったとおりのことを平面で再現します。それがマニュプレーションです。
いつも言うように、このとき多くのパタンナーは素直に再現できません。脳ミソが邪魔をするからです。既成概念とか先入観、常識といった観念が操作を狂わせてしまいます。立体でやったとおりを、余計なことは考えず、素直に再現しなくてはなりません。

ここで難しいのは尻グリです。
前中心と後中心の傾斜(ネカシ量と呼ばれている)が変化することで、ドレーピングで得た結果の尻グリ線がまったく役に立たなくなります。これを新たに引き直すわけですが、どのようなカーブにするべきか、それを言語で表現するのはとても困難です。ああもできないこうもできない。仕方がないからこうするしか他に方法がない。といった具合に、消去法的に求めるしかありません。具体的にはムービーを見てください。このようなカーブに変化するのです。
 


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6. 完成図

運動機能をパターンに付加する作業は以上で終わりです。ここから先の作業はパンツのメカニズム5の作業を繰り返すだけです。地の目および脛の筒は全体のシルエットによって自由に変えられることを思い出してください。

下の写真は完成図です。細くてもしっかり動ける機能性を持っています。ちなみに生地はノンストです。ストレッチ素材を使えば更に細いパンツを作ることが可能ですが、ノンストならこの程度が限界かと思います。

このモデルはかなり縦長体型をしていますが、それでも男子の脇線は写真Aのようにほぼストレートです。また内股線も直線に近いシルエットをしています。Bは横から見た写真ですが、後中心を切り開き、 その分前がたたまれたため、後ウエストと前ウエストの高さが極端に違います。後が大幅に長くなっていますが、もちろんこれが屈伸の運動量です。そしてもう一カ所、切り開いた分はヒップトップあたりの後中心に現れています。写真B、Cの白丸付近、ちょっと尖って後に突き出ているのがお解りでしょうか。
 

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