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理想のダミーを求めて 5

2012/01/30


よりカッコイイ服を作るためには、姿勢のいいダミーが不可欠なんだ。それがこの世に存在しない以上、自分で作る以外、他にに方法はない。僕がそう考え始めてすでに10年の時が過ぎました。理想のダミーを求めて、イギリスK&L社と日本のキイヤとの間で、今回のコラボレーション計画がスタートしたのが2年前でした。そしてようやく、ダミーは完成の時を迎えました。KLでもない、WOLFでもない、STOCKMANでもない、言わば世界で初めての、美しい姿勢をしたダミーが完成しました。

ところで、キイヤのダミーは紙でできてるって、知ってましたか?
これはキイヤダミーの特徴のひとつですが、紙を使うことで、ピンが刺しやすく、丈夫で、変形しにくい製品となります。たとえ破損しても、紙であるため、メンテナンスが簡単にできます。そして何と言っても、対称性や縫い目の位置など、ダミーの精度を高く保っていられるのも、素材が紙だからだそうです。確かに、KLのダミーはFRPでできているのですが、メンテナンスはできないし、精度は、キイヤとは比較になりません。
 

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張り子工程

左のムービーは、張り子材料である紙(再生紙)を雌型に張り込んで行く工程です。
販売される製品のすべてがこの方法作られているというのが驚きです。職人さんが一日に張れるのは、せいぜい2、3体だそうなので、とてもじゃないけど量産とは呼べません。そう、僕はビスポークテーラーの背広作りを思い出しましたが、将来に残したい貴重なワザのひとつです。

水で濡らした再生紙を何層にも張り込んで行きますが、層間にはデンプン糊と石膏を混ぜ合わせた接着剤が充填されます。
完成した中身は、そのまま乾燥室に一昼夜放り込まれます。
 


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ダミーの内側

これはかなり貴重な映像です。
再生紙を何層にも張り合わせ、最後の仕上げとして、補強用の石膏を塗り込む作業ですが、前身と後身の型を合わせた後、手探りで内部に塗り込みます。この時の石膏には、雌型作製で使ったツタを混入してあり、そのために強度が担保されるわけです。
 


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下地

からからに乾燥した張り子は、叩くとカンカンといい音がします。石膏などで補強しているためにそういう音になるのでしょう。乾燥室から取り出され、下地と呼ばれる工程へと進みます。

僕たち素人が見てもまったく判断できないほどの、僅かなへこみや出っ張りを修正する作業ですが、これも人間の眼力だけが頼りとなる、典型的なローテクのみで行われます。お化粧で言えばファンデーションに相当するこの作業の出来次第で、最後の化粧のノリが変わってくるという、重要な工程です。
 



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クロス用パターン作製

下地工程を終わったダミーは、緩衝材となる薄綿と、最後の化粧とも言えるクロスを張って完成します。クロスは麻を主素材とした天然繊維ですが、そのクロス用のパターンを起こすのがこの工程です。まさに我々のやっているドレーピングそのものですが、この作業を行うのが原型師だったとは驚きました。やはり原型師はパタンナーなんですね。
 


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クロス張り

いよいよ最後の工程。仕上げの化粧とも言えるクロス張りです。

この作業を見ながら、キイヤのダミーが紙でできている理由のひとつが解りました。
KL社のダミーは、例えば梅雨時になると、 クロスが余ってブヨブヨになります。しかしキイヤのダミーはそうはなりません。何故か。それはクロスが強いテンションで張られているからだと思うのですが、そのような仕上がりを維持するためには、クロスを強く引っ張り、ピンで仮り止めしながら張り付けて行く必要があります。もしも本体が紙ではなくFRPなどでできていたとしたら、このようにピンを打つことができません。パターンを取るときも、実際にクロスを張るときも、ダミー本体にピンが刺さるという張り子構造は、美しく正確なダミーを作るために必要な条件だったのです。

ついに完成です。思えば長い道のりでした。でも満足のいく出来映えです。こんなに美しい姿勢のダミーは、かつて見たことがありません。いい姿勢って、カッコイイですね!
 


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Copyright Koichi Tamaki