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テーラード全行程4



ドレーピング、平面作業、両身トワル、立体補正、平面作業と流れ、二度目の両身トワルを組む段階までやってきました。
通常の実務ならここでファーストサンプルの投入ということになりますが、最初の両身トワルで大きな修正があった場合は、もう一度トワルを組んでチェックすることもあります。というより、4回5回と組むことも珍しくありません。納得のいくシルエットが表現できるまで、何度もトワルを組み直すというのが僕のやりかたです。時間のかかる方法論だと思っています。だからこそ時間短縮に神経質になっているのですが、少々の無駄があろうと、とにかく早く作業をこなす。これを第一優先事項と捉えて自らに言い聞かせています。
 

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1. 補正作業


それはドレーピング直後のトレース、平面操作も同様ですが、せっかく立体で得た情報です。それを100%忠実に平面上に再現しなければ意味がありません。しかし黙って見ていると、なかなかそれができていません。どうしてそれができないのでしょう。理由は単純です。パターンのメカニズムが理解できていない、というか、身に付いていないからです。仕組みや因果関係が理解できていないのです。そしてもうひとつ重要なのが道具です。優れた道具を使わなければ、優れた作業などできるわけもありません。どうして僕がイラレにこだわるのか。そこを考えてください。
 


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2. 縫い代ツールの使い方

イラレによる縫い代付けは、本来なら「Illustrator テク」の中に掲載すべきですが、一連の平面操作ということで、あえてここで紹介します。
「縫い代ツール」ができたおかげで、イラレによるパターンメーキング作業は飛躍的に早くなりました。今となってはこれが無かった時代が懐かしくも思いますが、やはり人間、一度楽をするともう元へは戻れません。イラレの機能だけで縫い代を付けるなんて、考えただけでもゾッとします。
しかし思えば十数年前、僕がパターンメーキングの道具としてイラレを使い始めた頃、イラレは曲線の長さを計測することすらできませんでした。いろいろ工夫をしながら使っていたのですが、そんな苦労のおかげで多くを学びました。
 



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3. トワルの完成

今度の生地は本チャン用です。
本当はルパン三世のような赤でやりたかったのですが、ちょうどいい赤のゴアが入手できませんでした。それで代わりに黄色です。これも着こなし次第でかなりポップな雰囲気が出せると思います。

ナイロンリップ20デニールの生布にグリッドバッカーをラミネートした最高級のゴアテックスです。生地値を言うわけにはいきませんが、上代7~8万で売っているウールスーツの素材と同等だと思います。

僕が自分で縫ったトワルなので、はっきり言ってヘタクソな縫製です。プロが縫えばもう少しまともになるのですが、でもこんなラフ感が狙いなので、パッカリングもピリも気になりません。もちろんアイロンは一切使っていません。縫いっぱなしの状態です。

みなさんはこれを見てどう感じるでしょう。こんな縫製じゃ売り物にならないと思いますか。ルパン三世をイメージして作りましたが、ポップでトッポくて、ちょっとおっちょこちょいな雰囲気が出ればいいなと思ったのですが、狙いどおりに上がったと、密かに喜んでいます。

 

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袖山の高さもいい感じです。もう少し低くても良かったかなと思いますが、普通のテーラードと比較したら、とんでもなく低い山ですね。
アームホールと袖の接合もうまくいってます。イセは極めて少量ですが、それなりにかぶった袖になって座りも悪くないです。アイロンで無理やり押さえつけなくても、手を抜かずにドレーピングをやれば、この程度のものはできます。

さて最初に組んだトワルで、脇にヘンなシワが出ていたのをみなさんは覚えていますか。原因が何かを考えてくださいと僕はいいましたが、その答えをここでお話します。実はふたつの要因が重なっています。第一の要因は衿グリです。もう少し正確に言うと、衿グリが思ったより短くなってしまっていたのです。そのために前身丈が不足して、このような引きジワが出ていたのです。どうしてこんなことになったのでしょう。

思い出していただきたいのですが、ドレーピングはシーチングを使って行いましたね。その際衿グリには切り込みを入れていますが、シーチングの重みで衿グリは半身で約5ミリ近く伸びていたのです。
しかし最初に組んだトワルはゴアテックスを使いました。衿グリには切り込みを入れてありましたが、シーチングのようには伸びません。シーチングではちょうど良かった前丈が、ゴアを使うことで足りなくなったのです。

それでも僕が着るとこのシワは出ませんでした。それは僕がTシャツしか着ていなかったためです。つまりダミーのネック寸法より小さかったのです。だからダミーでは不足していた分が足りてしまったというわけです。
ですからこの部分は修正していません。衿グリはそのままです。ただ、上衿をいつもより甘めに設定しました。衿に吊られて前丈が短くなるのを恐れ、いつもより外回りを多めにしました。トワルを見てみると、脇のシワはほとんど目立たなくなっていますが、やはりもう少し前丈を長くしたほうが良かったかも知れません。というか、最初のドレーピング時にゴアを使うべきでしたね。

さてもうひとつの要因はヒップ寸法の不足によるものです。ダミーのヒップ寸に対して、トワルのヒップが足りなかったせいで、引きジワが出ました。これはあえてヒップを小さめに作りたかったのでしょうがないのですが、僕のヒップはダミーよりワンサイズ以上小さいため、僕が着ても欠点とはなりませんでした。しかしちょっとルーズサイズのジーンズでこれを着用してみたら、やはりヒップが足りないと感じました。もちろん僕に合わせて作っているわけではありませんが、着る人によって、表情が変わるという典型的な例となりました。

さてそろそろテーラード全行程の終了ですが、今回の要点をまとめましょう。

アイロンの効かない素材でテーラードを作るという試みが第一のポイントです。
イセは入れられない。殺せない。クセも取れない。そんな状況でまともなものができるはずがありません。だからポップでトッポイ服を目指しました。伝統的な技術やホンモノの技術と言われる要素を排除し、パターンテクニックのみで迫る、未完成なカッコ良さを表現したかったのです。最後は僕が実着した動画です。ルパン三世とはかなり違いますが、こんな雰囲気で着ていただきたいですね。とはいっても、どこにも売ってませんが。

 

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4. 完成図

かなりイメージに近いジャケットができたと、本人は意外にお気に入りです。
 



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5. おまけ

ほんとうはこんなコーディネートが理想です。バカっぽくて、いいですね。
 



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Copyright Koichi Tamaki