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アームホールと袖の基本 2



1. 取り付け条件

「アームホールと袖の基本 1」では基本となる袖の作り方を解説しました。袖は単なる円柱と考え、袖山ラインに上下左右は無いという話でした。右袖と左袖を付け間違えるなどという話を良く聞きますが、この袖には右も左もありません。前も後もないので、どう付けても間違いようがありません。もちろんこれは基本であり、実際には前後左右、上下の差は生じてきます。しかし考え方は常に円柱です。一本の紙筒だと考えなければなりません。

山に高さを持たせ、斜めに切断された紙筒を、その切断面がぴったり合わさるように壁に押し当てた状態。これが袖付けでした。ということは、脇身頃も当然のことながら、面になっているというのが前提です。いくら袖を丁寧に作っても、相手の身頃が面になっていなければ袖は付きません。身頃の具体的な組み方や脇面の考え方については別ページに譲りますが、身頃ができているという前提で、袖付けの考え方を解説します。

袖付けは下図14のとおり三つの条件によって成り立っています。

1. 山角度
2. 振り角度
3. 回転角度

これら三つの条件の組み合わせによって、袖の表情は様々に変化します。以下ではこれらの条件を個別に、具体的に解説します。

 

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2. 山角度

山角度は原則として袖山の高さで決まります。しかし脇面の状態がどうなっているかによって、その表情は異なってきます。それはつまり、身頃の状態が袖の表情を左右する重要な要素だということですが、改めて言われるまでもなく、それは当然のこととしてみなさん理解していると思います。
図15にあるとおり、特に肩幅は脇面の状態を決定する大きな要素ですが、同じ山の高さであっても、取り付ける面、つまり身頃の脇が変化によって図のように変化して見えます。

このことから、袖山の高さを考える際に、肩幅を切り離せないことがわかってきますね。そうなんです。山の高さと肩幅は、これまた衿やアームホールと同じように不可分の関係にあったのです。肩幅の一部は袖であり、袖の一部は肩幅でもあるのです。
 

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3. 振り角度

山角度と同様に、振り角度もその多くを身頃の状態に依存します。

袖が単なる円柱と考えた場合、それが取り付く壁に当たるのが身頃の脇面ですが、袖が振られるというのは、壁である脇面に角度が付いているためです。袖の付け方だけでも多少の角度は付けられますが、本体の角度を超えて付けられるなどということはあり得ません。上の肩幅同様、やはりドレーピング初期のイメージで、完成予想図をしっかり描き、思い通りの袖が付けられるような身頃を完成させる必要があります。

身頃は通常、前、後、脇の3面から成り立っています。そしてもちろん、アームホールは脇面のどこかに位置することになります。そしてその結果として、前幅、脇幅、背幅がそれぞれ決定されます。

みなさんの考え方では、前幅や背幅は身頃を作る最初の段階で決めていますが、僕の方法では、これも必然的結果として、後から決まるという点に注目してください。
 

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4. 回転角度

一方袖の回転角度は、100%袖に依存されています。左図17はその様子を描いていますが、一般的にはこの変化を「振り」と呼んでいる場合が多いようです。呼び方はどうでも構いませんが、広い意味での「振り」とは、上の振り角度と、この回転角度を足した状態を指すので、ここでは振りと回転を異なった概念として分けています。

ここで注意しなければならないのは、回転しているのは袖であると同時に、アームホールでもあるという点です。袖を壁に押し当てて、その周りを鉛筆でなぞれば、それがアームホールでしたが、 アームホールの回転によって、山の頂点の位置や、谷底の接ぎ目の位置も同じように回転しているという点に注意しなければなりません。
 

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5. 回転角度を付けた状態

左の写真は袖の回転を実際のトワルで再現したものです。身頃の肩の頂点に袖山の頂点を合わせて止めると、袖は写真18のようにほぼ真下に落ちて納まります。このとき身頃の脇位置は、袖の谷底に対応します。つまり、谷底の位置が脇位置となるということです。

仮にバスト寸法が半身で45cmだったとき、正脇位置は22.5cmの位置となります。しかし僕のように始めに袖ありきで作っていくと、脇位置はあくまでも結果論に過ぎません。袖の谷底がある位置が脇位置になるのです。それは果たして前後中心から何センチの位置にあるのか、計ってみなければわからないことです。しかしそんなことはどうでもいいことですね。デザイン的な意図から、脇を正脇に持ってこなければならない場合はともかく、特に制限がないのであれば、脇位置はどこだって大勢に影響はありません。
 

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写真19は袖をやや回転させた状態です。ご覧いただけばおわかりのように、山の頂点は大きく後へずれ、写真には見えませんが、脇下位置も大きく前へずれることになります。もちろん身頃の脇線も、これに合わせて前方に移動します。

それじゃあ脇線はどんどん前に行ってしまうじゃないか!

そうです。袖(アームホール)を回転させればさせるほど、脇線は限りなく前に移動しなければならないのです。

アームホールは回転したとしても、脇線は元の位置に残したらどうなのか!

確かにそのとおりです。残せるものなら残せばいいと思います。テーラードジャケットのように、袖を最後に縫う仕様のものならそれもできるでしょう。しかしブラウスやカットソーのように、袖下から脇を最後に入れる縫製の場合、それではちょっとおかしな事になりますよね。決してそれがいけないとは言いませんが、不自然であることは否めないと思います。不自然を回避するためには、袖下接ぎ位置を移動するなど、何らかの操作が必要になりますが、距離合わせの問題など、操作は難しくなる一方です。パターンメーキングはできるだけシンプルに、単純であるべきだと僕は思うのですが、単純であれば縫製も楽だし、無理が生じにくくなり、ひいては完成度のアップにつながるのではないかと考えるからです。
 

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さて写真20はかなり回転を強めて袖を付けています。ここまで回転させることは滅多にありませんが、運動機能を優先する服では、決して珍しいことではないのです。

さて今回の解説はここまでです。
次回は「アームホールと袖の基本 3」として、袖山と肩幅の関係に迫りたいと思います。
 

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Copyright Koichi Tamaki