title
HOME I WEBレクチャー I 玉置の考え I 経歴


ポロシャツの衿



ポロシャツの顔は言うまでもなく衿です。衿と衿元あたりの表情をどう表現するか、どう処理するかで、全てが決まってしまいます。もちろん肩幅や袖山の高さなども重要なポイントに違いありませんが、やはり何と言っても、重要なのは衿周りです。

ポロシャツに限らず、この業界ではカットソーをナメてかかる傾向が強いようですが、しかし良いブランドとそうでないブランドの違いが明確に現れるのが、カットソーなんです。良いブランドのカットソーは、どこも間違いなくカッコ良くできています。手を抜かず、やるべきことをキッチリやっているなと理解できる、良い顔をしているものです。中でもポロシャツは、特にその違いが明確に出ます。あえてどのブランドがいいとは言いませんが、良いブランドのポロは、とてもカッコイイんです。それに比べて、ナメてるブランドは一発でわかります。衿周りのメカニズムが理解できていない証拠ですね。

さてポロシャツの衿は、いったいどのようなメカニズムになっているのでしょうか。まずは重要なポイントを以下の3点にまとめました。
1.前下がりの位置
2.第1釦を外したときの衿の辛さ(返り方)
3.後中心衿グリの位置

身頃や袖など、衿以外にも注意しなければならない箇所はたくさんあります。しかしそこは他のアイテムとも共通する点でもあるため、今回はなるべく簡単な説明に止めます。1点だけ、身頃の重要なポイントとして、胸グセ処理の説明をする必要があります。今回は男性用なので、ダミーはKLのGKSを使います。

 

img  

1. 前身の胸グセ処理

ダーツや切替線を入れられないアイテム、デザインの場合、常につきまとう問題が胸グセ処理です。みなさんも日々この問題に泣かされてることと思いますが、分散させる箇所は決まっているため、あとはその分量を、どのように配分するかという問題に終始します。
分散させる分量の配分方法は、素材やデザインによって決まってくるため一概に言えませんが、ポロシャツの場合、前開きがバストラインあたりまであるということが大きなポイントになります。つまり前中心に、かなりの量を分散できるということです。ムービーでは、前のネック縫い目あたりで、約1.4cmほど中心線が倒れています。こんなに倒したら前が浮いてしまうのではないかと思われるでしょうが、やってみると、思ったほどは目立ちません。シャツの時もそうでしたが、前開きアイテムの多くの場合に、このテクニックが応用できます。
 


img  
  このページのトップへ  

上のドレーピングを平面的処理で説明すると、下のムービーのようになります。
前中心を倒した分だけ前ミツ幅が広くなり、前中心の距離が長くなるわけです。
 


img  
  このページのトップへ  

すでにお気づきかも知れませんが、僕はポロのドレーピングをやっているのに、伸びないシーチングを使っています。
本来なら本チャン素材でドレーピングするべきなのでしょうが、カットソーのように伸びる素材は、その伸び方を均一に表現するのが難しいのです。なので最初のトワルは原則として布帛を使います。例えば水着などのように、伸び伸びの素材ほどそうします。布帛では身体にフィットする感じが表現出来ないように思うでしょうが、それでも全体をバランス良く表現するためには、布帛でなければダメなんです。この方法と考え方は、何かの機会に改めて解説します。
 

img

img  
  このページのトップへ  

2. 長くなる前丈

写真Aを見てください。
ノースのポロシャツですが、わざと抜けた状態でダミーに着せ付けました。前立下から裾に向かって、ダーツ状にハネています。みなさんもこのようなポロを良く見かけると思いますが、先に書いたとおり、カットソーをナメているパターンはこうなります。前身も後身も同じような、単純な囲み製図で引かれたパターンにありがちな状況です。特に切り前立は前中心で縫いしろ分が取られるため、この現象が顕著に出ます。

写真Bは設計どおり普通に着せた状態です。
上のムービーにあるような処理を施すとこうなります。前丈が長くなり、前下がりの位置が下がり、前のハネが解消されます。前立部分が胸グセを吸収しているため、このように綺麗に収まるわけですが、説明されない限り、現物を観察してこれを読み取るのは難しいことだと思います。
 

img

img  
  このページのトップへ  

3. 衿の準備

身頃は伸びない布帛を使いましたが、衿は本チャンを使います。これは身頃とは逆に、絶対に布帛ではダメなんです。何故か。ポロシャツのキモである衿は、その伸ばし方に最大のポイントがあるからです。ムービーにあるような厚手のフライス、出来れば本チャンの横編付属を用意します。

まずは高さ8cm、長さ25cm(衿グリ距離よりやや長めが良い)の長方形を作ります。
次に衿先の長さを決めます。ここでは6cmとしました。ムービーにあるように衿付け線をカーブでカットします。
このカーブはまさに適当で構いませんが、前寄りで急激なカーブになるより、なるべく後中心線に近いところで消えるような、ゆったりとした、緩やかなカーブにしたほうがいいでしょう。その理由は後ほど説明します。
 


img  
  このページのトップへ  

僕がまだ平面と格闘していた時代の話ですが、なぜポロ衿は伸ばして付けなければならないのか、その理由が良く解りませんでした。

僕はポロシャツ専門の工場さん何軒かにその理由を聞いてみました。しかしどの工場さんも、明確な答えを出してくれませんでした。ミシンの押さえガネに押され、どうしても伸ばされてしまうからだとか、そのほうが縫製しやすいからだとか、何とも非論理的な答えしか返ってきませんでした。確かに、ある程度伸ばして付けた方が、衿の返りがスムーズで綺麗な仕上がりになることはわかっていました。しかしそのメカニズムが理解できませんでした。

その後自分のパターンメーキング・スタイルをドレーピングに変えてから、ようやくその答えが理解できるようになりました。
やはり物事には、しっかりとした根拠がありました。明確なメカニズムが存在しました。
 

img  
  このページのトップへ  

4. 衿伸ばしの理由

ポロ衿は単なる長方形ですから、そのまま半分に折っただけでは、クリースラインは直線になります。
クリースラインが直線になるということは、衿先(剣先)の長さが確保できないばかりか、衿の外回りが不足することになり、綺麗に返りません。そこでクリースラインを曲線で表現することになるのですが、下のムービーはその仕組みを表しています。

これは実際にやっていただければわかりますが、クリースラインを曲線に仕上げるためには、どうしても衿を伸ばさなければなりません。下のムービーでは半身で1cm以上伸びることになります。クリースラインが曲線になることではじめて、衿の表情をいろいろと表現できるのです。上記の衿作りで、衿付け線はゆったりとした緩やかなカーブで・・・という説明をしましたが、このカーブが不均一だったり極端だったりすると(よく見かけますが)、クリースラインが綺麗に返ってこないのです。 このメカニズムが、衿を伸ばさなければならない最初の理由です。

更に下の図を見ていただきたいのですが、この伸び率は、衿の後丈と衿先丈の差寸に反比例します。差寸が小さいほどより伸ばされるということです。したがって衿先が長いほどより伸ばさなければならないということになります。衿先の長さはデザインですから、表現したい衿の表情によって、伸ばし率も変化することになります。このメカニズムを理解することが重要です。

勘違いしやすいのであえて付け加えますが、衿は伸ばされてしまうわけですから、その分全体の長さを縮めておかなければならないということです。つまり衿を短く作らなければならないという意味です。ここは間違えないようにしてください。
 



img

img  
  このページのトップへ  

5. 更なる衿伸ばし

下のムービーは、前段4で折った衿を、身頃に取り付ける様子を映しています。
前下がりをどこにするかはあらかじめ決めてありますが、これはデザインですから、ここでなければならないという理由はありません。求めたい表情となるよう、適当な位置を設定します。

衿が首に素直に沿うよう、無理なく自然に取り付けます。このとき衿を意識して伸ばしたりしてはダメです。もうすでに、上のアイロン処理で1cm以上も伸びているのですから、あくまでも自然に、無理なく取り付けてください。

さてこうして衿が完成するわけですが、いまは前立の第1釦を締めた状態であることに留意してください。

衿グリもやや大きめで、女性用で可愛らしく着用するならこのまま完成ということでも構わないと思いますが、男性用としては、ほとんどの場合第1釦は外して着るでしょうし、場合によっては衿を立てたりもしますよね(僕はこの着方が嫌いですが・・・)。

したがってもっとラフに、スポーティーな表情を作りたいと、僕は思うのです。
しかしこのまま第1釦を外すと、ムービーにあるとおり前立の返りが甘くなり、女性的な雰囲気になってしまいます。前立をもう少し辛く返るようにすれば、ラフ感やスポーティー感が表現できると思うのですが、そのためには、衿の外回り距離を短くしなければなりません。しかしこれはポロ衿ですから、短くした分は、外回りだけではなく、衿付けも短くなると認識しなければなりません。つまり衿全体は更に短くなるわけで、結果として、更なる伸ばし付けを強いられることになるわけです。

そして更に、これは素材の伸び加減によっても異なりますが、編みの甘いフライスではどうしても外回りの距離が余り気味になります。そこでムービーのように後でもつまむことになります。ここではほんの僅か、半身で5ミリくらいをつまんでピンを打っています。最初の余りが約1.2cmあったので、合計で1.7cmも外回り距離を詰めたことになります。

 





img  
  このページのトップへ  

6. まとめ

さて全体像をまとめてみましょう。

クリースラインをカーブにするための伸ばしは、実際に衿を計ると約1.2cmでしたが、ドレーピング後のパターンを計測すると、前グリ14.2に対し、衿付けは13.3で、その差は0.9しかありませんでしたので、ここで伸ばされた距離は0.9cmということになります。

これは現物パターンを計測した結果なので、素直に従うしかありません。
ただ注目すべきは、伸ばす比率が部位によって異なっているという点です。前身頃の中間にあるAノッチを境に、後側は7.4で前側が6.7になっています。
これに対応する衿付けを計測すると、後側が7.1で前側が6.2です。比率で言うと、後で約4%、前で約7.5%伸ばされているということです。

後衿グリは伸ばさないで付けたつもりでしたが、やはりフライスの厚みがあるため、0.1cmではありますが伸ばされてしまいました。ポロ衿のフライスは案外厚手になるため、ここでも少しは伸ばされると認識する必要があります。ここでは0.1でしたが、現実問題としては0.3cmくらいは見ておく必要があります。

ここまでの伸ばしは以下のようになります。

衿全体距離 = 22.8 - 0.9 - 0.3 = 21.6
後伸ばし率 = 約3.5%
SNPからA間伸ばし率 = 約4%
Aから前端の伸ばし率 = 約7.5%

更なる伸ばしでつまんだ分(左図赤斜線部分)を計算してみます。
前が1.2cmで、ほぼAの真上にあるため、後と前で0.6ずつ等分します。
またSNPのあたりで0.5つまんでいるため、これも0.25ずつ前後で等分します。結果として以下のようになります。

衿全体距離 = 22.8 - 0.9 - 0.3 - 1.2 - 0.5 = 19.9

となります。つまり衿グリ22.8cmの身頃に、約20cmの衿を、伸ばしながら取り付けなければならないということです。衿全体の伸ばし率は12~13% になるということです。ただし上記したとおり、部位によって比率を変えなければなりません。

後伸ばし率 = 8.6 - 0.3 - 0.25 = 8.05 = 約6.4%
SNPからA間伸ばし率 = 7.1 - 0.6 = 6.5 約12.2%
Aから前端の伸ばし率 = 6.2 - 0.6 = 5.6 = 約16.5%

となります。身頃と衿にこの比率に従ったノッチを入れ、そのとおりに縫製してもらわなければなりません。

以上がポロ衿のメカニズムです。想像以上に複雑だと、思いませんか?

 

img

img  
  このページのトップへ  
Copyright Koichi Tamaki