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パンツのメカニズム 2



尻グリを除き、パンツは2箇所の切替で構成された単なる筒だと言いました。2箇所の切替とは脇と内股です。この2箇所の切替だけで、あらゆるシルエットを表現しなければなりません。だからパンツは難しいと僕は言いましたが、この2箇所の切替は、具体的にどう操作すればイメージするシルエットが表現できるのでしょうか。ここではドレーピングによって明らかになるシルエットのメカニズムを解説します。  

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1. 平面的思考の落とし穴

下図は平面パターンですが、解りやすくするために模式的に描かれています。また話を単純にするために後身頃(または前身頃)のみで解説します。

左端は基本となるストレートスローパーです。この原型を使ってシルエットを作る場合、みなさんは右図のように、裾幅を狭めたり膝幅を狭めたりするのではないでしょうか。ここで言うシルエットとは、あくまでもワタリ線より下の話で、ヒップより上、ウエストにかけての話はとりあえず除外します。

パンツのメカニズム 1 で、パンツは2本の筒でできていると僕は言いました。そしてワタリから下は、太腿から膝にかけてのテーパーした円筒形と、膝から裾にかけるほぼ平行の円筒形でできていると言いました。だから直線で表現できるはずだとも言いました。ならば、尻グリを除き、シルエットを直接的に表現できる切替は脇線と内股線のふたつしかないのですから、上下ふたつの円筒を組み合わせれば当然左図のような形状になると思われます。誰もがこの方法で間違いないと言うでしょう。しかし本当にこれで良いのでしょうか。平面では確かにこれでシルエットを操作できますが、実際問題として、ほんとうにこんなことができるのでしょうか。
 

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2. ドレーピングで検証してみると・・・

下はストレートスローパーをドレーピングしたものです。解りやすくするため股下は短めに設定していますが、基本原理はこれで十分理解できるはずです。写真A、Bはそれぞれ前と後から見たものです。内股線はほぼワタリの中央とし、裾へ向かって垂直に降りています。写真Cは真横から見たものですが、左が前で、脇は股下と同様、垂直に降りています。白の長方形で示したとおり、ほぼ長方形のシルエットになっていますが、ストレートスローパーですから当然ですが、前から見ても後から見ても同じような長方形をしています。

さてここからシルエットを作っていくわけですが、パターンでは上図のように脇線と内股線で裾幅を狭めています。それを立体で見ると、写真の赤点線のようになります。赤点線のとおりにトワルをたたまなければなりません。平面的思考なら当然たためると思うでしょう。果たしてそうでしょうか。
 

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3. 脇ではシルエットを作れない

写真Aは上の写真Cのとおり、脇でつまんでピンを打った状態です。ワタリ線上に大きなシワが盛り上がってしまいます。重力に従って垂直に落ちている脇では、一見するとシルエットを作るために最初のパターンのように裾をつまめそうに思いますが、ドレーピングが示すとおり、脇での操作は事実上不可能なのです。その理由もドレーピングを見れば明らかです。

上図B上の図は、写真Aをパターン的操作で表したものです。脇の裾を三角状に取るということは、 脇線の途中、ワタリ線付近を止まりとしてダーツを取っていることになります。ダーツである以上、止まり付近が盛り上がって膨れるのは当然です。アイロンでこれを潰すことができるのなら、ある程度のダーツを取ることも可能ですが、ここではアイロンは御法度なので、ほとんど脇ではつまめないという結論になります。これは物理的な問題なので、みなさんご自身でドレーピングをやればすぐに理解できるでしょう。
 

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脇が取れないという理由にはもうひとつあります。写真で使用しているボディーは、「New BletasY6」男性用パンツフォームです。女性用を含むほとんどのパンツフォームもそうですが、前から見たときに足が少し開いて(足下で約14~16cm)います。これを開脚姿勢と呼びますが、当然のことながら、開脚の度合いによってドレーピングで得られるパターンの結果が変わってきます。

ストレートスローパーの脇線は垂直に落ちているわけですから、開脚が強ければ(足が大きく開いていれば)裾(写真の場合は膝位置)はボディーに当たってしまいます。つまりそれ以上つまめないということです。もし足をぴったり綴じた状態のボディーならば多少(膝位置で前後それぞれ1.5cm程度)は取れるかも知れませんが、そんな直立姿勢でパターンを作ってしまったら運動機能はほとんど無くなってしまうでしょう。動きの取れないパンツというのも問題なので、やはり多少は開脚を意識して作る必要があります。余談ですが、ジーンズなどは極端な開脚姿勢でパターンが作られているため、運動機能は抜群に良くなります。

さて脇線に大きなダーツを取るのは難しいというのが解りました。しかしそれでは困ったことになりますね。何とか脇線を使ってシルエットを表現したくなります。どうしても脇線で操作したいと言うのなら、方法がひとつだけあります。それはダーツではなく、完全な切替線として扱うことです。

上図B下は脇線の上、ウエストまでダーツ線を延長した状態を表していますが、ヒップ寸やワタリ寸を変更するわけにはいかないので、筒の形状を更に極端な円錐状に変えなければなりません。当然のことながらウエスト寸法が広がって大きくなります。確かに物理的に可能な手段ですが、果たして大きくなったウエストのダーツ量を処理することができるでしょうか。図では前身のみを描いてありますが、実際は後身が同じ形状で接ぎ合わさることを考慮してください。ダーツ量がここまで大きくなれば、どんな生地を使ったところで、どんなアイロンテクニックを使ったところで、処理することは極めて難しいのではないでしょうか。

左の写真はボディーを女性用に代えたものです。上のメンズボディーに比べると幾分脚が閉じている(足下で約12cm)ため、その分メンズよりは脇をつまめます。写真Cのとおり脇線がやや外に向かって開いているので、赤点線のように垂直になるようピンでつまみました。Dは脇方向から見た写真ですが、つまむ前の写真Eと比べてください。横から見たときのシルエットには何の変化も出ていません。脇でつまんだ量は前後合わせて約4cmですが、これだけ取っても脇から見たシルエットに変化を与えられないのですから、やはり脇線での操作には限界があることが解ります。
 

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4. パンツのシルエットは内股線が支配する

脇がダメなら、残る切替線は内股しかありません。実はパンツシルエットは内股線がコントロールしているのです。下の写真は内股線ですが、元のストレートスローパーからピンを外し、内股線を上に引き上げるように持ち上げた状態です。Fが前身、Gが後身です。内股を引き上げることで、垂直に落ちていた前後の折り山線(身頃中心線)が内側に引き込まれ、先細の円錐フォルムが作られます。
 

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上の写真は左から正面、脇、内股の、ストレートスローパーからのシルエット変化を表しています。前述したとおり脇で取れる分量には限界がありますから、ほとんど内股の操作だけで、ここまでシルエットを変化させられるということがご理解いただけたかと思います。逆の言い方をするなら、内股の操作以外に、パンツのシルエットを作る方法はないということです。

もう一度最初の図を見てください。 平面製図で考えると、一見パンツのシルエットはAやBのように脇線と内股線で操作できると思いがちです。しかしそこに大きな落とし穴があることが解りました。C、Dはドレーピングの結論を平面的に表したものがですが、これではまるで男物のジーンズのパターンのようですね。恐らくみなさんはこのパターンを見て大きな違和感を覚えることでしょう。でもパターンはここで終わりではありません。
 

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下図C、Dにある赤線は、ワタリの中心と裾の中心を結んだ線です。つまり地の目線(身頃の中心線)です。上図では垂直線が地の目でしたが、内股線が変化することで、地の目は当然このように変化しなければなりません。そしてこの地の目が垂直になるよう回転させたのがE、Fです。 変化したのは内股線のみですが、こうして回転させると、まったく別物のパターンのように見えてきます。

さてここにパンツのメカニズムにとって最も重要なポイントが見えてきます。E、Fを見れば明らかなように、尻グリの傾斜が変化しました。原型のストレートスローパーより傾いてきましたね。回転したのですからこれは当然の結果ですが、この結果こそが重要なポイントなのです。
 

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この続きはパンツのメカニズム 3をご覧ください。  

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