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オープンカラーの作り方



そもそも衿は大きく二種類に分けられます。返り線が直線のものと曲線のものです。さらに曲線の中には、衿腰を切替えているものがあります。今回は開衿、オープンカラーをやりますが、オープンカラーの特徴は、衿の返り線が曲線であり、なおかつ衿腰を切替えていないことです。これに対して、例えばテーラードのラペルと上衿(本来のテーラードは)の返り線は直線です。

下の絵は返り線が直線の場合と曲線の場合の簡易パターンです。この衿を実際に折り曲げるとどうなると思いますか。結論を先に言いましょう。直線のものは平面的になり、曲線のものは立体的になるのです。はたしてどういう意味なのか。まずは下のムービーを見てください。
 

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1. 返り線の違い----直線と曲線

直線の返り線は、直線なんですから当然きっちりたためます。つまりたたむ前と同じように平面になるということです。もっと違う言葉で言えば「ペタッ」となるわけです。

一方曲線の返りだとまったく異なります。衿は立体的な構造物となって、紙で作るとかなりの強度でその形状を保持します。どちらが良いとか悪いとかいう話ではなく、原則的に衿にはこの二種類があるよ、という話なのですが、重要なことは、返りを曲線でやった場合、立体的な構造物として形が決まってしまうという点です。形が決まるということは変更が効かないという意味でもあり、その曲線の曲がり具合を間違えてしまうと、大変なことになってしまうということです。返り線の曲がり具合は、衿の表情を左右する重要なファクターです。

今回のテーマであるオープンカラーはもちろん曲線の返り線ですね。問題は、その曲線の曲がり方なのです。どのようなカーブでどの程度曲げればいいのか。それを見つけるというのが今回の主題です。

 



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2. ドレーピング

下のムービーは「ドレーピングの流れ」にあった「衿と衿グリを作る」と同じものです。

ドレーピングの流れ

ドレーピングの方法や解説は上記ページを参照していただきますが、何のためにドレーピングをやるのか。ここではその必然性をもう一度考えてください。上にも書いたとおり、返り線のカーブの具合を見つけるために、わざわざドレーピングをするのだというところをご理解いただきたいのですが、それを求める方法が他に無いからです。

以前使ったいい衿がもしあれば、それを使えばいいと言いましたが、それがなかったら、いったいどうやって衿を作るのですか。平面製図で作れますか? どう計算すれば、頭に描くとおりの衿の返りを作れるのでしょうか。立体で見ていくしか、他に方法がありますか?

 



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3. 衿をパソコンに取り込む

ドレーピングで作った衿を取り込むため、パソコンの画面に貼付けたところです。言っときますが、これは冗談じゃありません。本気です。身頃や袖など大きなパーツは、当然スキャナを使って取り込みますが、衿のように小さいパーツは、この方が早くて正確なんです。

これはうちの若い弟子の一人が考案したものですが、パーツをパソコン画面に直接貼付け、それをイラレでダイレクトにトレースするという方法です。これは確かに優れた方法です。優れた道具とは、高い完成度を維持しながらその目的を最短時間で達成し、なおかつ低コストを実現すると僕は言いましたが、まさしくこれを見ると、パソコンは優れた道具だと実感します。みなさんも一度試してみてください。
 

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4. 衿を作る(平面展開)

ドレーピングで作ったパターンはスキャナで画像化し、それをイラストレータ上に取り込んでトレースします。平面作業はできるだけコンピュータを使うのが合理的ですが、そのためには、パターンメーキング行程のなるべく早い段階で、各パーツをデータ化しておく必要があります。

イラレで描いた左の衿はどう見ても「辛そう」です。つまり外回りが不足しているように見えます。事実このままでは外回りが不足するのですが、問題なのは、不足分がどの程度なのか解らないという点です。返り線のカーブの具合が解らないのと同じように、その分量が解らないからドレーピングをするのです。最初から解っているなら、ドレーピングの必要はありません。どうして僕はいつもドレーピングなのか。そうです。パターンのことが、何もかも解らないからです。

 


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5. 衿を付けた状態

イラレで作った最初の衿を取り付けたのが左の写真です。やはり予想どおり辛くなっています。返り線の止まり位置がバスト線あたりにまで下がってしまい、まるでテーラードのようです。しかしいつも言うとおり、ここから段階的に理想に近づけるというのがドレーピングの基本です。面倒な作業かと感じるかもしれませんが、これを行うことで、パターンのメカニズムが理解できるようになるのです。ここが稼げるパタンナーとそうでないパタンナーとの分かれ道ですね。
 

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6. 衿の修正(ドレーピング)

衿の立体補正です。下の写真のように、衿全体が奇麗に納まるよう切り込みを入れます。オープンカラーは原則として一枚衿ですから、甘くなった分だけ、クリースラインは首から離れることになります(右)。どの程度切り開いたのかを計測し、それを平面操作で展開します。マニュプレーションと呼ばれる作業ですが、これもやはり、パソコンが優れた道具であることを実感せずにはいられません。昔はみんな手作業でこれをやっていたのですが、いやぁ、良い時代になりました。
 

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7. 衿の修正(修正量)

赤丸と数字は切り開く分量を具体的に記したものです。オープンカラーは一枚衿ですから、衿先で開いた分量を計測しても良いのですが、折り返したとき、首からの浮き分を調整したこともあり、ここでは返り線上での開き量を採用しています。

いよいよこれから、返り線が曲線に変わっていくわけですが、曲線の曲がり具合は開き量によって変わるのだということがお解りですね。またその開き量は、上の写真のように、こんな衿にしたいと頭に描いているイメージによって変わるということです。だから僕は、平面ではそんなこと解らないでしょ、って言ってるのです。

 

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8. 衿の修正(平面展開)

さてイラストレータで最も難しいのは、これがパターンメーキング専用のソフトではないため、どのツールをどんな場面で使うべきかを自分で探さなければならない点でしょう。実はそこがイラレの最も面白いところでもあるのですが、今回の衿展開で使っている機能と要領を以下に箇条書きにします。みなさんの作業の参考にしてください。

1. パーツの切り開きは「分割」を使う。
2. 切り開く分量は「正円」をモノサシとして使う。
3. 開きは「回転ツール」を使う。
4. 「カット」アンド「前面ペースト」でオブジェクトの上下を入れ替える。
5. スマートガイドのON、OFFを場面ごとに切り替える。
6. 修正線の描画には、元のパスを利用する。

 


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9. 第二段階(修正後)の衿

補正した衿を取り付けてみました。ほぼ想定した形に近づいたようです。あとは好みの問題なので、もっと甘くしたければ甘く、辛くしたければ辛くすればいいと思います。この衿の返り方はちょっと男っぽい、というか、固さがありますね。女性ものなら、もっと甘くてもいいかも知れません。

右は横から見た写真ですが、僕の作る服のひとつの特徴が良く現れています。後中心付近での衿の立ち上がり方が、ダミーの首に沿っていないという点です。他のページで何度も申し上げているので繰り返しませんが、着易い服を作りたいという思いが、このような衿を作らせるのです。

 

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10. 曲線の返り線

最後に完成した衿を紙で作ってみました。曲線の返り線を折り曲げてみましたが、紙はパターンの特徴を良く表現してくれます。

熟練のパタンナーなら、経験則として返り線の曲がり具合を知っています。どの程度曲げればどんな表情になるか。長年の試行錯誤と紆余曲折から、平面製図のみでそれを表現できます。しかし勘違いしないでください。それはあくまでも長年の経験からくる、いわば勘を頼りにした答えの求め方です。そこに計算式や論理があるわけではないのです。だから僕は解らないと言いました。解らないからドレーピングをやるのだと言いました。結局のところ、これが一番の近道なのになぁ。

 


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Copyright Koichi Tamaki