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シャツ衿の基本



シャツ衿を考えるに際し、注意すべき点を、まず先に上げておきましょう。
1. 素材は何か。
2. 衿の仕上げ方法はどうか。
3. ネクタイをするのかどうか。
4. 台衿釦を締めた状態の見え方はどうか。
5. 台衿釦を開いた状態の見え方はどうか。

上記は言わば、シャツを作る際の条件です。これからどのようなシャツを作るのか、これを把握してなければ、衿など作れるものではありません。今回は以下のように設定した上で作業を行います。

第1は素材です。
ここでは一般的な素材、70か80の綿ブロードということにしましょう。

次は衿の仕上げ方法ですが、要は潰し衿か立ち衿か、ということです。潰しならば潰し易い衿にしなければならないし、立ち衿なら、立ち易い衿にしなければなりません。通常シャツは棚物と言って、店頭の棚に並べられるのが普通ですから、そのときに一番カッコイイ状態で客の目に止まる必要があります。
ここでは原則として立ち衿で作ります。しかし百貨店のドレスシャツ売り場にあるような、ノリの効いたパリパリではなく、もっと自然な感じのする、品のいい立ち衿にしてみましょう。また洗濯も洗濯屋さんに出すのではなく、自宅の洗濯機を前提とし、アイロンなどもきちんとかけないで着用することを前提とします。従って衿芯は使いますが、あまり厚手ではなく、薄めの柔らかい、できればフラシの芯を使いたいところです。

従ってネクタイをするのかどうかも曖昧になります。
やろうと思えばできますが、しなくても十分耐えられる表情でなければなりません。つまり、あまり甘い羽根衿では困るということになります。かといって台衿の下半分が見えてしまうほど辛い衿でも困ります。洗いざらしでもそこそこに治まり、品のあるラフ感を表現しなければなりません。

ネクタイ無しで、台衿を締めて着る場合も考慮する必要があります。またそのとき、衿先が跳ねるようでは困ります。なるべく身頃に落ち着くよう、かといって潰れないよう、これは芯の問題も大きく影響しますが、パターンがすでにそのような要求を満たしている必要があります。

同時に開いた状態も重要です。上記の条件を考えると、恐らく閉じるより開いて着るほうが多いと思われるため、開いた状態でもカッコ良くなければなりません。閉じても開いてもカッコ良く、しかもパリパリではなく、適度な保型性がなければなりません。

上記のような条件で作ることにしましょう。なんだか難しそうですが、要はいい加減にやればいいということです。どの条件も、どちらにも転べるよう、中途半端に作れば、きっとそんな雰囲気になるのではないでしょうか。

 

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1. 台衿を作る

まずは台衿から作りますが、前回やった長方形衿を使ってはじめます。
長さは適当です。ネック寸法プラス15cm程度にしておきましょう。高さですが、これは、仕上がった衿を後から見た高さから決定します。仕上がりの高さを4.2cmとした場合、羽根衿の折り返り分が約4ミリ、衿下のかぶり分が約2ミリとなり、台衿の高さは3.5cmとなります。後中心線を描き、ネック分21cmのところに前中心線を記しておきます。

正面から見た両サイドの台衿の立ち方は、垂直に立ち上がるのではなく、やや上が細くなる台形がいいと思います。これは衿グリの断面に対しての話ですが、それも好みというか意匠の問題なので、みなさんの好きなように据えていけばいいと思います。また横から見た台衿上端ラインの見え方ですが、原則として長方形のままの、直線で見ることにします。

フロントの入り方は、少しばかりテクニックを要します。上記した条件に合うよう、衿の表情を考えながら据える必要があります。
まずは中途半端な立ち衿仕上げに対応できる衿を考えなければなりません。強い立ち衿なら、前中心のネックポイントは高くなるし、潰し衿なら低くなります。どちらにも対応できるよう、中間的な表情で決めてみます。またこのとき、台衿釦を締めた状態と、開いた状態の表情も合わせて想像しておく必要があります。ここは後で羽根衿を付けてから見直さなければならない箇所ですが、台衿だけの状態でも、完成型を予想しなければなりません。

後中心からサイドネックポイント付近まで、台衿の衿付け線は長方形のままでも、問題なく身頃に沿っていきます。しかしサイドネックポイントから前方にかけては、そうは行かなくなってしまいます。長方形のままでも構いませんが、それでは衿グリのV字形状がきつくなり過ぎ、仕上げた時に不自然な治まりになってしまいます。また前中心付近の台衿の高さが、高くなりすぎるため(その高さを狙うなら別ですが)、フロント付近を図のように削ります。これは片眼をつぶりながら、自然な衿グリを想定して、マジックで印を付けます。このとき一度に切りすぎないよう注意してください。少しずつ、何度かに分けて、慎重に切ります。そして最も重要な前中心の治まりです。はじめの条件を満たすよう、かつカッコイイ仕上がりになるよう意識して、慎重にピンを打ちます。衿の基本で述べたとおり、衿を無理矢理ピンで止めないよう、また衿付け線が身頃から浮かないよう、自然で無理のないドレーピングを心がけてください。

衿付けラインを引いたらいったん衿を外します。

 



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2. 台衿をカット

マジックで印をした衿付けラインどおりに、台衿をカットします。
マジックの印はあくまでも目安とし、よく切れるハサミで、正確かつ美しい曲線になるようカットします。このラインが衿グリを作るのですから、慎重かつ繊細な作業をしてください。もし間違えたら、新たな不織布に写し替えてやり直してください。
 



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3. 台衿を付け直し衿グリを描く

きれいにカットした台衿を、身頃に付け直します。
最初に据えたとおりではなく、もっとカッコよく付くように心がけ、また最初に述べたとおり、シャツ衿としての条件を満たすようにピンを打ちます。

うまく付いたら、いよいよ衿グリを描きます。
衿の上端を左手の指で押さえ、ペンをなるべく立てて、ペン先が身頃に直角に当たるよう印を打ちます。終わったら肩線のガイドとなるサイドネックポイント、ショルダーポイントをそれぞれ記入します。前中心、後中心の印も忘れずに入れて下さい。

最後に、台衿の前中心の高さと、衿を横から見た状態を検証します。台衿が最もいい状態で、なおかつ自分の思い描く形状に治まったとき、前の高さがどの程度になるのかをチェックします。低すぎるようなら足さなければならないし、高すぎるようなら削る必要があります。またその状態によって、次に行う羽根衿のドレーピングが変わってくるため、横から見た時の衿の形状も含めて、良く観察し、修正すべきはこの時点で修正しなければなりません。
衿を横から見た時の、台衿上端線の形状ですが、これは羽根衿が付いたときに、折り返る線でもあります。自然に無理のない衿を表現するには、この線はできるだけ直線に見えなければなりません。上に反り返っていたり、逆に山形になっていたのでは、無理のある返り線となり、美しい自然な衿になりません。例えばテーラードのクリースラインなどもそうですが、返り線は、常に直線であることが望ましいのです。
 



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4. 羽根衿を作る

下の写真は外した台衿です。
台衿は元々長方形だった衿の、フロント部分を削り取っただけの単純な形状です。しかしこの削り取ったフロントの形状こそが、衿グリと不可分の関係にある重要なラインであることは言うまでもありません。このラインをイラレで正確にトレースしておかなければなりません。

下図は台衿をイラレでトレースしたものです。ブルーのラインが羽根衿ですが、シャツ衿の基本として、ここでは返り線が直線になっているので簡単です。剣先から外回りにかけてのラインはデザイン線のため、後で衿を身頃に取り付け、立体で形を作ります。ただし後中心からサイドネックポイントまでの間は直線とします。また羽根衿の後中心の高さも台衿と同じにしておきます。
 

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5. 羽根衿の外回り分量をドレーピングで決める

羽根衿を台衿の返り線どおりに取り付けます。なるべく返り線に近い位置でピンを打つようにしてください。 ピンを打ち終わったら外回り分量を切り開いていきます。どこを切り開くかはトワルが教えてくれるのですが、最初は難しいと思いますので、ムービーのとおり、3カ所に切り込みを入れて下さい。切り込みは返り線ギリギリまで入れますが、決して切断しないよう注意して下さい。

ネクタイをするのかしないのか。台衿に対する羽根衿のかぶり量はどの程度にするのか。釦を外して着たときの見え方はどうなのか。様々な条件が満たされ、なおかつカッコイイ衿になるよう、表情を作ります。しかし半身では完璧を求めることはできません。平面でパターンを清書し、両身で組んで最終的な微調整をしなければならないので、ここではあまり時間をかけず、適当なところで衿を外します。ムービーにあるように、切り開いた分量をメモするのを忘れないでください。
 


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6. 羽根衿を平面で展開する

切り開いた分量は左図のようにメモしてありました(1)。全体で0.7cm開いていますが、剣先の方が身頃より離れる分量が多いため、切り開いた分量も多くなります。後方の0.1ずつは、ネクタイをするという前提なら少ないでしょう。ここでは無理すればネクタイもなんとかできるという前提なので、ゆとりはこの程度に抑えました。今回はたまたまこうなっただけの話で、作ろうと思う表情によって、この数値が変化することは言うまでもありません。

2番目はそのとおりに切り開いたところです。直線だった切り返線がこの程度にまでカーブするということですが、この羽根衿のカーブには、必然的な根拠があるということがお解りだと思います。平面製図で定量的に描かれるものではないということをご理解いただきたいと思います。剣先をカットし、全体を清書したのが3番目の図です。剣先の長さは約7.5cm位にしてありますが、これも見た目でカッコよくなるよう、またはデザイナーと打ち合わせて決めるようにします。いずれにしろ剣先からの羽根衿外回りは、サイドネックポイントまではデザイン線なので、どうにでも好きにすればいいと思います。

4番目は完成図です。破線は3番で描いた外回りの線ですが、後中心で1cm長くなっています。これは返り分の8ミリと、後中心でのかぶり量を2ミリ加えたからです。後中心からサイドネックポイントまでは、返り線とほぼ平行な線となり、そこから剣先にかけて結びます。

先に記したとおり、衿の収まりを半身で見るのは限界があります。剣先のハネ具合や返りの甘さなど、必ず両身で確認しなければなりません。手を抜かずに実行してください。シャツに限らず、台衿付きの衿は、原則としてすべてこの方法でできるはずです。挑戦してください。
 

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